君がここで笑うシーンが

いや、答えなんかはいいんだ ただちょっと

そうしてまた、音楽を食べるのだ。ーNEWS『音楽』が紡ぐ文学ー

あまり音楽を聴いて「読む」という感覚に陥ることはないけれど、確かにわたしは『音楽』というアルバムを読んだのだと思う。

このアルバムは、アルバムの醍醐味である「聴き手に与えられた想像という余白」をInterludeが入ることによる起承転結ができることである意味破壊している。しかし、それが逆に広大な余白と余韻を与えていてたまらないのである。

NEWSのアルバムを買ったのははじめてだった。だけど、はじめて買ったNEWSのアルバムがこれでよかった。読むことに飢えていた心を埋めてもらえたからだ。空っぽだったわたしの心は、確かに音楽で満たされた。心地よい満腹感。そして同時に、本を読み終えたあとの爽やかな気持ち。今なら、きっとなんだってできそうだ。

 

さて。満腹感あふれるメニューを、つたない言葉ではあるが紐解いていこうと思う。これを書きおえたあと、わたしはきっと目を閉じるだろう。そうしてまた、音楽を食べるのだ。わたしの内側に、音楽がある限り。

 

 

 「じゃあ、君の食べたことのない『音楽』を教えてあげる」

 

いつだって僕らは待ち焦がれていた

この星が生まれたように

 

浅はかな人間なので再生するなり「いや秒で伏線回収するやん」と声を出してしまった。音楽を知らない星が話すから、あえて余白を入れるその仕事の丁寧さにもう最初から唸ってしまう。

松たか子さんの優しい朗読で既に期待に満ちているのに、始まったTRIADがそれを遥かに超えてくる。なんてったって、

『さんざめく 想いこそ音楽』

この言葉を一曲目で歌える強さ。最初に結論が分かりやすく明示されている論文は素敵だと習ってきたが、間違いなくこのアルバムも素敵なのだ。だって、こんなにも強い答えが、もう見えている。

 

立ち上がれ あゝ
本当の声で 本当の自分(きみ)で
僕はまだ 君もまだ
“負ける意味を知らない”

 

このアルバムには音楽を食べる星が出てくるが、星に言い聞かせるように二曲目が始まる。星はまだ、口をもたない。『音楽を食べる』意味を知らない。先の一曲目がアルバムのはじまりならば、この曲は「星の旅路」の始まりです。

 

夏が過ぎて
夢は覚めて
思い通りじゃなくても
遠回りして
口笛吹いて
僕らはまた歩いていける

 

なるほど、カノンによればどうやら星が生まれたのは夏らしい。しかも、誰かの生まれ変わりのようで。人が亡くなると星になるというけれど、きっとこの星は「生き方を忘れ途方にくれる 大事なものもわからなくなってく」そんな日々の中で生まれたのではなかろうか。ほんのり香る星の過去に、NEWSの面影が重なるような気がした。「夏が過ぎて
夢は覚めて 思い通りじゃなくても 遠回りして
口笛吹いて僕らはまた歩いていける」、星もそう思えるようにと願いながら、物語はリズムの章へとうつっていく。

 

「これがリズムってやつさ。

そう、リズムはどこにだってある」

 

踊りだせ
Hit on me
朝まで
朧げな瞳
揺らそう
移り気な
他人のフリして
歪んだ世界も
溶かして twilight

 

チンチャうまっか Yeah
危なげな 君の瞳は
恋の味

 

 

ご希望の行先へ 世界何周でも
しっかりつかまって 離さないで

 

また秒で伏線回収していくNEWS…と唸りながら聴いた、リズムの章。リズムを教わった星に与えられた、ポリリズムという最高のごちそう!ご馳走様はまだまだ遠くて、恋の味というデザートまで。そしてそれは、いつまでも終わらぬ夜に変わっていく。楽しい食事は終わるなと願いながらもあっというまに終わるけれど、その感覚に近い気がした。

 

それらの線と線の間で、

多くの星が一斉に瞬く。

まるで楽器のようだった。

口のない星の代わりに、

男は口笛でそのメロディを鳴らしてみせた。

 

 

Melody-Interlude-のあとのビューティフル。もうここはとにかく聴いてほしい。わたしの言葉はいいから聴いてほしいのだ。

紡がれる口笛。あまりにも綺麗すぎていつも泣きたくなる。本当に綺麗なのだ。まさしく、ビューティフルなのである。新しい本読んでる感じに近いと感じた理由はたぶんメロディーの章にあった。この辺に来るともはや良すぎてずるいのフェーズに入りはじめてくる。本当にずるいのだ。綺麗で、いつもそばできみの心に寄りそえたらという、覚悟を感じて、ずるいのだ。

 

 

ピンク色の月を眺める星に、

男は突然、問題を出した。

 

ビューティフルに感動し、移ろう月の美しさを感じていたらまーた秒で伏線回収しおった。このアルバムは幾つの陳腐な推理小説を実力で倒しているんだろう。

ここまでたくさんの音楽を食べてもなお飢える読者と星に、男は言う。リズムはひとつでは成立しない。

 

そんな言葉を予告編にして、次の章が始まった。

 

鳴り響け heartbeat
いつまでも踊ろう
遠く離れていても
途切れることのない HEART-mony

 

 

まさにこの曲はリズムを奏でている。星の知らない集合体。無知という負けの意味を知る星を包むのは、一羽の鳥だった。

 

飛び方忘れ 羽根をたたんで
こころの鳥は空を見上げる
息をひそめ 何を待つ?
また別れを知って
それでも明日へ
理想を掲げ、傷を背負っていく
もう一度飛ぶ、夢を見て

 

“大丈夫”と歌っている

 

 

これはわたしの勝手な考えなのだが、たぶんこのアルバムの主役はこの曲だ。この曲は生きていた時の星を諭し、そうしてまた、もう一度夢を見ることを許している。この曲で負けを知り一度は負け犬として星になった誰かは、「大丈夫」だとまた飛び立つ勇気をもらえるのだ。星も、鳥も。空へ向かって、飛び出していく。

 

男と出会った夜は、星が再び飛び立つ前日譚なのだろう。

 

駄目だ 駄目なんだ そんな唄じゃない
探しているのは もっとまっすぐで
棒切れみたいな 唄がいいんだ
地面にささって 目印になる
疲れた誰かの 杖になる唄

 

カナリヤが星の星になるまでの歌ならば、この曲は男が音楽を知るまでの歌なのだろう。男が星に音楽を教えるまでの日々は、友との日々だった。

ところでやけに金八先生というか、ちょっと暴力的なまでに自分を鼓舞する歌だなと思って聴いていたら作詞が本当に武田鉄矢で驚いた。さすが武田鉄矢、「逃げてもぼくに君がいるから 弱い君が必要なんです」とアイドルに歌わせても許される力がある。

 

 

そして、星は叫んだ。

口はいつのまにか生まれていた。

 

それぞれの過去を経て、ついに星に口が生まれる。星は不協和音に触れてしまい、叫ぶのだ。

 

We're going higher 強靭き願いが
時代の火蓋を切っていく 何度も

 

離れないで 手を握って
運命を超えて ゼロからのrebornを
命なんて くれてしまえ
何度でも土を払って立ち上がれ
変わらない愛を君へ
Tighten up my soul 絆のリボン
 

…この人たちこのアルバムの中でいくつ伏線をはり回収していくんだろう。もはや怖い。そして腹が立ってくる。あまりに綺麗で。

ここも黙って聴いてほしい。わたしははじめてここを聴いた時あまりの強さに泣きそうになってしまった。NEWSの音楽は強い。強いのだ。「変わらない愛を君へ」届けるために、彼らは歌い続けるのだろう。

 

 

2人の間を強い風が吹き抜け、やがて光の射す方へと流れていった。

 

星と男の物語は、ついに夜明けとともに終わりを迎える。

 

愛を 愛を
愛を謳おう
歩いて いこう
風の呼ぶ方へ
救いはある
恐れすてて
叶うため生まれた未来だ

 

男はこの先も、風に呼ばれるがまま歩くのだろう。

 

光よ
願いを
唄え
夜明けの中
変わらない愛を
君へ贈る

 

星は歌い続けるのだ。星の生まれてはじめての自分のために口にした言葉は、男との約束だった。

 

「これからも歌い続ける。

僕の内側に、音楽がある限り。」

 

 

音楽がある限り、星の、NEWSの、旅は続く。

 

 

人を好きになって四半世紀経った。

今の貴方に願うことはなんだろう。

 

中居正広さん、お誕生日おめでとうございます。

50歳。50かあ。アーイツは50!!になったわけですね。なんだかもうよくわからなくなってきました。50さい。50かあ。

 

貴方が50歳になる、ということはつまり、私も貴方を好きになってから、四半世紀を迎えるわけです。正直四半世紀って貴方の口以外から聞いたことがないワードなのであまりにも実感がわきませんが、それでも、四半世紀。小さな頃から大人になるまでずっと、貴方が好きで、貴方に恋をして、貴方の生き方にこがれて、貴方を信じて、生きてきました。貴方という人の日々を目に焼き付けて生きてこられたことは、私にとって本当に本当に誇りです。貴方はいつかこう言っていましたね。「下から『みえ』『プライド』『誇り』とあるなら、SMAPは『誇り』」だと。貴方の誇る日々を、ともに生きてこられたこと。それは、わたしにとってもかけがえのない誇りなのです。貴方というアイドルに出会えて、本当によかった。貴方の言葉に魔法をかけられたまま育つことができた私は、本当に本当に幸せ者です。

 

さて、中居くん。今の貴方に願うことは、いつだって同じです。健康でいてね。よく寝てね。孤独死しないでね。

 

どうかどうか、この先も。貴方の生き方を目に焼き付けさせてくれたら、それだけで幸せです。

貴方なりののんびりとしたペースで、というか会社の名前が「のんびりなかい」なのにここまでどうしたって飛ばしすぎだと思うので、たまには本当にのんびりしてもらって。

貴方の健康を願うナカイヅラが、「あの子」がここにいることなんて知らなくていいから、どうかどうか、健康でいてください。そしてできれば、いろんなことは早めに報告してくださいね。「あの子」ももうすぐ三十路になります。そんなに心臓が強いわけではありませんので。よろしくお願いします。あ、たまの浮気は相変わらずしています。気が向いたらでいいです。また歌ったり、踊ったりしてみてもらえたら嬉しいなあと思います。この間横浜アリーナで、いつかの貴方みたいな踊りを一生懸命踊っている男の子がいました。今年の冬、いよいよドームに立つ子です。貴方の言葉を真摯に受け止めて、貴方に会いたがっている、優しい優しい子です。気が向いたら、会いに行ってあげてください。きっと喜ぶと思います。

 

長々と書いてしまいましたが、結局は「お誕生日おめでとうございます」、これにつきます。本当に本当におめでとう。50歳。背負わず気負わず、のんびりと。どうかどうか、健康でいてください。

誰よりも優しい人が、優しい日々を送れますよう。

Sexy Zoneのはじめてのドームおめでとう記事まとめ

*わけわかんなくなってきたので自分の記録用です。足りてないぞ!とかあったら教えてください。

*ひとまず8/15 18:00までのもの

 

 

*anan

 祝Sexy Zoneドームツアー発表! 感動のライブ報告。 – 取材、文・福田恵子 | ananweb – マガジンハウス

 

*GINGER

Sexy Zoneのセンスが光る80’s、90’sの世界。幸せな空気に包まれた横浜アリーナ公演をレポート | GINGER[ジンジャー] | 自分を主役にした人生を。

 

 

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Sexy Zone【速報&メンバーコメントあり】ドームツアー決定おめでとう!! 横浜アリーナツアー公演MCルポ | エンタメ | MORE

 

AERA

Sexy Zone「10年待った、10年経った、10年願った」初ドームツアー報告の瞬間【詳細レポ】(1/3)〈週刊朝日〉 | AERA dot. (アエラドット)

 

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Sexy Zone3人でかけ声「頑張っていきま“勝利”で、いき“マリウス”」アリーナツアー横浜公演最終日 : スポーツ報知

 

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*サンスポ

Sexy Zoneが初ドームツアー! デビュー10周年で夢の舞台「勝利、マリウス、報告できたよー!」(1/2ページ) - サンスポ

 

中日スポーツ

Sexy Zone、初のドームツアー決定 12月16、17日東京ドーム、同24、25日に京セラドーム大阪 中島健人「俺たちがセクシードームを盛り上げます!」:中日スポーツ・東京中日スポーツ

 

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スポニチ

Sexy Zone メンバーに聞く ドーム公演「直接お伝えできうれしかった」「思いは一つだった」― スポニチ Sponichi Annex 芸能

 

 

ドワンゴ

Sexy Zone 初のドームツアー開催決定、「やったー!!」とガッツポーズ | ドワンゴジェイピーnews - 最新の芸能ニュースぞくぞく!

 

 

オリコンニュース

SexyZone、デビュー11年で初のドームツアー発表「お待たせ。10年越しの片思いがようやく実ったよ」 | ORICON NEWS

 


*デイリースポーツ

Sexy Zone 初ドームツアー決定! デビュー10年超!横アリ公演最終日に吉報/芸能/デイリースポーツ online

 

 

*モデルプレス

Sexy Zone、初ドーム公演決定 デビュー11年目で夢の地へ<会場一覧> - モデルプレス

 

 

*THE FIRST TIMES

Sexy Zone、初のドームツアー開催決定! サマーツアー横アリ公演のレポートが到着 – THE FIRST TIMES

 

 

*音楽ナタリー

Sexy Zone、“デビュー当時からの夢”ドーム公演決定 - 音楽ナタリー

 

 

*ぴあ

Sexy Zone、初のドームツアー開催決定 横浜アリーナ最終公演のオフィシャルレポート到着 | ぴあエンタメ情報

 


Billboard japan

https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/115511

 


*BARKS

Sexy Zone、初のドームツアー開催決定「10年越しの片思いが実った」 | BARKS

 

 

タワーレコード・オンライン

Sexy Zone、初のドーム・ツアー開催決定。8月14日横浜アリーナ公演のレポート到着 - TOWER RECORDS ONLINE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*追伸。

ドームツアーおめでとう。本当におめでとう。

それから、挑戦し続けてくれて、ありがとう。

いつの日か、今日という日も、Sexy Zoneのハイライトになりますように。

『母、Sexy Zoneのライブで「人生のハイライト」を感じる。』の巻

突然だが、うちの母親は無駄にオタク修羅場の場数が多い。好きな男がアイドルをやめオートレーサーになり、自担の相方とも言える男の結婚発表の場に立ち会い、自担の所属するグループのメンバーが捕まり、時を経てまた捕まり、週刊誌の常連になり、そして解散した。その他、推しの離婚、離婚による裁判、などなど、生死の境以外のことは大体経験している。楽しいことも苦しいことも、一通り。

 

そんな母の人生の中に深く刻まれていることのひとつは、自担の相方とも言える男の結婚発表の場に立ち会ったことである。母は酔うと未だにこの話を昨日のことのように語る。あの日の木村拓哉は憎たらしいほどにかっこよかった。あの日の中居正広は正真正銘SMAPのリーダーだった、エトセトラエトセトラ。深く刻まれすぎて、時々完全再現できてしまうほどに。

 

 

そして、事件は起きたのだ。

 

 

 

2022年8月13日、横浜アリーナ

あれ、?と思ったら、母が膝から崩れ落ちていた。

自分の母親があんな風に、まるでコントみたいになっている姿をはじめてみた。

すべての発端は、菊池風磨のこの一言である。

 

 

 

「俺………結婚します」

 

 

 

 

あの言葉に、瞬時に木村拓哉を連想できたのはたぶん、あの場に中島健人とうちの母親しかいなかった。わたしはまーた菊池風磨やってんな、くらいの気持ちでいたし、隣のおたくは菊池、?と慌てて口に出していたけれど、母は違った。がたん、と音を立てて、膝から崩れ落ちていた。

わたしがきょとんと母を見ていると、中島健人さんが言う。

 

 

「お前何言ってんだよ(笑)

それSMAPのOP前の木村さんな。」

 

 

母と目があった。見たことのない速度で首を動かし手を叩いて泣きながら笑っているので全てを察する。

 

ふまけんと通じ合ってしまったのだ。

 

2人のやりとりは続く。

「でもお前YouTubeの見すぎ」

TikTokです」

「今後そういう発表もあるかもしれない。 in the future.」

「思ってたよりわかなかった。もうちょっと沸くと思った。あーそうなんだくらいの感じで」

 

ふうまくんは「思ってたよりわかなかった」なんて言っていたけれど全力で訂正したい。いましたよ、その発言に大はしゃぎしていた人が。貴方が「結婚します」と口にした瞬間、すべてを理解した人間が。いました。うちの母親です。

 

母はライブが終わった後こう言った。

「あの瞬間一瞬で2000年に戻ったわ」

 

今年のSexy Zoneのアルバムのタイトルは「ザ・ハイライト」。リード曲にもこうある。「振り返るハイライト 君とのモーメント」。まじもんの「振り返るハイライト」を、ライブのはじまりでうちの母はやってのけてしまったのだ。たぶん誰よりも正しい意味で「人生のハイライト」を感じてしまったのである。

 

 

そしてまた菊池風磨は見事に母の心を掴んでしまった。

 

「俺今度結婚します」と、もう一度口にしたふうまくんは木村拓哉の真似をしたのである。母曰く「あれはずるい」とのことで、ひいひい、それはもう息も絶え絶えに笑っていた。もうぐちゃぐちゃになっていたのだ。娘が若干引くほどに。

 

ライブの間、母はずっと楽しそうだった。なんとなくふうまくんのうちわを渡しておいてよかったとも思う。久々に、なんというか「少女の顔をした」母を見た。たぶん、純粋にアイドルを追いかけていた頃に戻っていたんじゃなかろうか。きらきらな笑顔で、Sexy Zoneをみていた。

 

終演後。Sexy Zoneの世界観をめいいっぱい満喫し、清々しい顔をした母はこう言った。

 

「ザ・ハイライト、本気でしちゃった。本気で振り返るハイライトだったわ…」

 

どうか、今日のライブが、母の人生を自然となぞる形になった今日が、いつまでも母の人生のハイライトになればいいなあと思う。「愛すべき love day」のひとつに、今日が加われば、それ以上に嬉しいことはない。

「振り返るハイライト 君とのモーメント」

母のハイライトのどこかにSexy Zoneがいるなら、娘としては万々歳なのだ。

 

 

菊池風磨さんがananの表紙やるんだって!!!!!

優しい君だけに、わたしの過去の話をしますね。
くだらない話です。きっとすぐに忘れてしまう。

 

わたしがうまれたのは、遠い雪国の寒い日のことでした。吐く息も白く染まる冬の夜の帳にうまれたわたしには、何もかも溶かしてしまうような、優しい優しい幼馴染がおりました。

けして裕福とは言えない暮らしでしたが、ささやかでも確かな愛を受け育ったと自負しております。その愛の中には確かに、優しい優しい幼馴染からの愛もありました。幼馴染の話はいつもデタラメで、可笑しくて、わたしはそれが大好きだった。わたしの幼少期の記憶のほとんどは、彼からもらった日々のものです。

 

あの冬の夜からもうすぐ十八年が経とうとした頃。彼は、もうすぐ成人になるわたしに「欲しい物を一つ上げよう」と言ってくれました。華やかに輝く 街角のショーケース。小娘の目を惹く宝物なんていくらでもあったのです。プレゼントを探す見知った背中に、わたしはやりきれない程の感謝を抱きました。そうして、迷いに迷い、こう口にしたのです。

 

「欲しい物なんてない」


それはわたしが嘘が嫌いな彼に、初めてついた嘘でした。

 

今思えば、あの時きちんと貴方がほしいと言えるような初心な心を持っていたらよかったのかもしれません。そうしたら、きっとわたしは今涙を堪えながら、震える唇で言葉を紡ぐ必要などなかったのかもしれないのですから。なんと愚かだったのでしょうか。はじめての嘘は、わたしにとってとてつもない代償を与えました。

 

今朝、見てしまったのです。見てしまったのですよ。幼馴染が、美しい黒髪の女性と、抱き合う姿を。

彼は、彼女しか見ていませんでした。ドアの隙間、偶然見てしまったわたしの姿なんて見えていなかった。去年の夏に書店で見たそういう特集はカメラ越しのわたしまで射抜こうとしていたけれど、彼はまったく違いました。世界には2人だけ。2人の愛しい瞬間を、わたしは、わたしは、見てしまったのです。

 

夢から醒めぬ夢に溺れられたらよかった。だけど、一番愛しい人の愛し慈しむ、優しい時間を見てしまったのです。

 

その刹那、わたしの中のこれまでの幼馴染の姿は儚く消え去ってしまいました。小さな頃、クレヨンを貸してくれたこと。土砂降りの日、図書館で傘を貸してくれたこと。へたくそだなあと笑って撫でてくれた髪。夏の日に1人体育館でバスケットをする姿。はじめての飲み会で、さりげなくわたしのビールを飲んでくれたこと。何度も一緒に帰った帰り道。何度も焼き付けた横顔。いつか言われた「ちょっと横になる?」の本当の意味を、きちんとわかる女だったらよかったのに。

 

「ねえわたしのこと好き?」

怖すぎてずっと聞けなかった初恋が、散ったのです。

 

 

ええそうですよ、幼馴染は彼です。今日の主役の。とてもよく似合ってるわ…やっぱりわたしじゃダメだったのよ。あまりにも小娘すぎた。

 

彼が結婚したこの夜に名前をつけるならば。

今この瞬間、わたしの中のすべてが終わったのだ、とでも言いましょうか。


なんてことないよくある話だけれど、でも。
これが今のわたしのすべてなのよ、なんて。

彼に聞かれたら、笑われてしまいそうですね。

 

まあ、全部。真夏の夜が魅せた、嘘なのですけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

㊗️ 菊池風磨さん

anan表紙おめでとう

ございます!!!!!

 

というわけでわけのわからない小話を書いてしまいましたが、菊池風磨さんがananの SEX特集の表紙をなさるそうです。おめでとうございます。

 「発売日は7月7日。 “ananというMilky Wayの中で僕という彦星を抱いて”ですかね」という嵐を呼んだ中島健人さんのSEX特集から一年、まさかこんなに早く菊池風磨さんにこの特集がくるとは思わなんだ…どうしよう、ふうまくんまで「Bath time…わかる?」っていいだしたら。わからんがな。一年経ってもわかりゃしないわ。

圧倒的彼氏の菊池風磨さん、ものすごいはやさで抱かれたい男になってしまった。そろそろ菊池風磨の色気で死人が出ますね…中島健人さんが「熱を帯びた、特別な時間」で、菊池風磨さんが「愛し慈しむ、優しい時間」なのも大正解です。ありがとうございます。一生マガジンハウス様には頭が上がりません。

けんとくんの時は映画のワンシーンなので画面越しのわたしとも目が合うけれど、ふうまくんはもう目の前の人しか見てないのもまあた大正解なんですよね…菊池風磨はミスターリアル、中島健人はマスターフィクションなので…

 

もうね、ここまできたら祭りにとことん乗っかりたいと思います。

2人とも素敵な誰かの夢になったね。おめでとう。これからもどうか、素敵な夢を見させておくれ。

 

 

*今年のふうまくんのanan

 

*去年のけんとくんのanan

 

 

 

*リンクがうまく開けない人むけ

・ふうまくん

anan(アンアン)2022/8/24号 No.2311 https://amzn.asia/d/gEOSOH8

・けんとくん

anan(アンアン)2021/7/14号 No.2257[愛とSEX/中島健人] https://amzn.asia/d/8cWSeip

さよなら、わたしの一番星

適応障害だねえ」
2022年の夏。数年ぶりに訪ねた心療内科の主治医は、そう言った。

 

休むべきだろうが、君の性格はきっとそれを許さないだろうから。
医者はそう言ってぽちぽちとパソコンを動かす。ちなみに、と医者は今度はわたしの顔を見てしっかりと言う。

 

「社会に不適応とか不適切という意味ではないよ」
さすが、なんでもお見通しな主治医だ。

 

 

さて、本当はこんな時にさらりと書くことではないのだけれども、実は去年の10月にわたしは同居人を見送っている。中島健人さんに触発されてプロポーズしてきたあの男。中島さんのふたつうえ。身長がわたしより10センチ高くて、優しくて、京都のお土産のお煎餅がすき。わたしより文章がうまくて、中島らもが好きな、そんな人。

 

最終的に彼を奪ったのは癌だった。細かいことはもう思い出したくもない。名前を聞くだけで忌々しい。最後の数日間、おしゃべり好きだった彼を静かに黙らせたこと。絶対、絶対許してなんかやらない。

 

昔から、死んだら星になれるんだと意気揚々と話していた。だからおれは早く星になる権利をもらえたんだよ、とも。

 

よく晴れた空の下。同居人は、わたしを置いて、好きにさせるだけ好きにさせて、どこか遠くに出かけてしまった。
一応事実婚という体でさまざまな手続きを済ませ、彼の懸念事項だった義妹ちゃんとうちの叔母の養子縁組を軽やかに行なった頃。義母を見送った。今年の春のことだった。100歳。大往生である。

 

彼と約束していたことがいくつかある。

半年は亡くなったことを公表しないこと。早く彼を忘れて再婚すること。彼が倒れても、亡くなっても、できる限り、日常をやり遂げること。

 

今日このブログを書いているのは、いくつか理由がある。

まず、最近の心が動かないことにちゃんと理由がついたこと。人間は、物事に理由があると安心する。心が動かない理由がわかったら、なんとなく、文章を書きたくなった。ありのまま書いても許されるような気がして。一応このブログを書くにあたり主治医に許可まで得ている。無駄なことに律儀なのは、気付いたらあの人に似ているのかもしれない。

次に、Twitterで最近暗いことばかり呟いていて、現場でお会いするのも申し訳なくなってきたのだ。いっそ一度きちんとこんな状態でありまして、とちゃんとお伝えしようと思った。ありのまま、この半年のことを書いてみようと思った。別に可哀想だと思われたいとか同情してほしいとかいうわけでもない。誰かに聞いて、読んで欲しくなってしまった。それから、たぶんこの先もこんな感じだから許してくださいまし、という謝罪である。本当にろくなことをつぶやかないし体調に左右されがちでさすがに申し訳ないとずっと思っていたのだ。このまま罪悪感に苛まれながらTwitterやおたくを続けるのはあまりにもしんどいので、わたしのためにもちゃんと書いておこうと思う。シングルも前みたいについてけないかもしれないし、興醒めみたいなことを呟いてしまうかもしれないけれど、許してほしい。ちなみにわたしはすこぶる元気だ。心だけが死んでいる。現場も行く。Sexy Zoneを好きな気持ちだけは、なくさずに生きていきたい。それだけは、許してほしい。

あとは、これは非常にお恥ずかしい話なのだが、シンプルに一人で恋人を亡くした事実を抱えきれなくなってしまった。誰かにわたしが世界で一番好きだった人のことを、話したくなってしまったのだ。

 

そういえば、彼と約束したもう一つのことがあった。

 

「俺の話はフリー素材だから、好きに書いてね」

俺の生きた証を残せるのは、つぐみだけだよ。

 

まったく。無駄にかっこいいんだよな、あの人は。

 

さて。勢いに任せて彼が亡くなってから数日間のことを振り返りたい。ただフィクションを読んでます、くらいの感覚で読んでほしい。なにせ記憶が曖昧だったり、あとは、これまた恥ずかしいのだが、ノンフィクションだとしたらあまりにもなんだかこう、彼が亡くなったことを受け入れなければならなくなりそうで。だから、愉快などこかの星のフィクションだと思って読んでほしい。あと、一緒に生きた日々のことは、なんだかまだ全部振り返るには甘すぎて。この先に書けたら少しずつ書いていくし呟いていくから、まあ、今日のところは亡くなってすぐのことだけを書く。

 

その日の朝。病院からやけに早く電話が来て、わたしはああ、と膝から力が抜けた。亡くなった後じゃなくて、亡くなりそうな時に連絡をくれるんだとこの時はじめて知ったのだった。

その日はたまたま撮り溜めた彼女はキレイだったの編集をしていた日で、たまたま彼が一番好きだった8話のCMを切っていた。ああ、と頭を抱える。

 

本当はそういう立ち合いも彼の病院では「夫婦」でなければダメだったのだけど、今振り返ると病院の先生とか看護師さんが「あなたは立派な妻でしたよ」って言ってくれて、それがなにより救いだったなあと思う。 正直わたしは「夫婦」でないことが一番の重りだった。彼の子どもを産めなかったこと。流産してしまったこと。いろんな罪悪感で「夫婦」になるのを渋っていたことを、彼が倒れてからずっと後悔していたから。だから、「あなたは立派な妻でしたよ」って、それがどうしようもなく救いだった。

病院について、「亡くなりそう」の意味を知る。まだ生きていたことに少しだけ驚いてしまった。生きているならそんな綺麗な顔をしないでよ、と思う。あの男は自分の死にまで用意周到で、コロナ禍でも最期を看取らせてもらえるよう調整していた。そんな配慮いらない、と思いながら髪に触れる。名前を呼んだ。返事はない。当たり前だけど、返事はなかった。

どれくらい時間が経ったかわからないけれど、わたしは彼が亡くなった瞬間をやけにはっきり覚えている。彼が遠くなる感覚が確かにしたのだ。動かないのに。返事はないのに。ふわり、と、浮いた気がして、そうしたらもう、亡くなっていた。

 

当時は鍵垢にこもり、思うまま呟いていた。あの時見ていてくれたフォロワーさん、本当にありがとう。

 

亡くなったあと、ずっと手続きに追われて、なんか思っていたより泣けなくて、自分に引いていた。浸る間も無く右から手続き、左から手続き、背後から手続き。あの男は常々わたしならこれができると思ったから結婚しようと思った、と言っていたけれど、馬鹿野郎めと亡くなって1時間ほどの時点でわたしは彼を少し恨んだ。何枚お前の名前を書いたらいいんだ。よくこれがわたしにやれると思ったなお前は!!

 

「ばーか」

 

彼が亡くなってはじめて口にした彼の名前は、やけに震えていたような気がする。

 

よくわからぬまま家に帰り、よくわからぬまま寝た。

 

翌朝が一番辛かった。あ、いないんだって、それが一番辛かった。

 

ご時世渦にも関わらず、あの人の人柄ゆえか様々な来客が来てくれた。彼が一番湿っぽいものを望んでいなかったことをみんな理解してくれていたから、それから数日間の我が家は、二人で暮らした3ヶ月だけの楽園は、やけに賑やかだったように思う。喪中の札がなかったら、たぶん誰も誰かが亡くなったなんて気付かなかったんじゃなかろうか。

 

一番最初に飛んできてくれたのは母だった。なんにも言わずにわたしを抱きしめて、それから彼の髪に触れて、すっと深呼吸して、すぐにわたしの代わりに電話番をはじめた。あんなにかっこいい母を、はじめてみた。

 

笑いながら来たのは義妹ちゃんだ。

「お兄ちゃん、こんな綺麗な顔しちゃって!」

そう言って、彼女は彼に死化粧をした。こんなことのために資格とったんじゃないよおって、笑いながら。

 

葬儀まで2日時間が空いたのも私には救いだった。その間に、気持ちが整えられたからだ。

ただ、絶えぬ来客の間、わたしはずっと苦しかった。彼の思い通りに見送りたかったから、和やかな空気の維持に勤めていたけれど。本当は、わ、笑って、いいのか…?いいんだよな…?って一人で確認していた。もしかしたら不謹慎なやつに見えてたのかなとか、悲しいを隠さないとたてなかったとか、よくわかんない言い訳ばっかり並べていた。

 

夜になると散歩に出て、夏のハイドレンジアを聴いて泣いた。彼もわたしもあの歌が好きだった。よく家で流れていたし、彼も口ずさんでいた。これを口ずさんだら健人になれるかな、と笑っていた。

 

聴きながら考える。

わたしは、あなたのヒロインになれていたのでしょうか。

 

彼は本当にいい人で。ヒーローみたいで。

なんでわたしなんかと一緒にいてくれたんだろう、本当に。

 

貴方のさいごはわたしでよかったんですか。

 

 

通夜の前夜。わたしは、彼と2人きりで最後の夜を過ごした。線香のにおいに包まれながら、髪に触れ、頬に触れた。好きだよ、と、口に出したら返事が聞こえた気がして。何度も、何度も、そう口にした。名前は、呼べなかった。

 

通夜の日の朝。義母がようやく我が家に着いた。着くなり深々と頭を下げられ戸惑う。

「あなたが、あの子の一番星でよかった」

 

あの子をひとりにしないでくれてありがとう。

 

静まりかえった玄関。杖をつきながら頭を下げていた義母の、やけに綺麗な喪服姿を、今でも時々夢に見る。

 

さて。通夜の4時間前に、わたしははじめてガタがきた。彼がこの日のために用意してくれていた帯に触れても、なにもする気が起きない。変なとこが用意周到なのだ、本当に。明日の予定は忘れるくせに、自分が亡くなってからの準備は完璧だった。そういうところが大嫌いで、一番好きだった。この日のためにわざわざ新しい帯買って義母に預けてたとこも、色んな人にわたし宛の手紙をその都度預けてたとこも、それを亡くなってから渡せと言っていたところも、亡くなってからの来客がみんな揃いも揃って水色の封筒を持って貴方を訪ねてきたことも、全部好きだった。あいというものを説明しろと言われたら、たぶんわたしは彼の名前を答えるんだと思う。 

 

通夜は、滞りなく終わった。喪主の挨拶でも、泣けなかった。

 

翌日。朝起きてすぐに泣き崩れた。え、今なんだ、?と自分でも思った。

彼が先に会場に向かうのだけれど、わたしはそれにも駄々をこねた。一緒に行くんだ、嫌だ、と子どもみたいに泣いた。嫌だ、嫌だ、嫌だ!!!

「はなれたくない」

あ、と口にしてはじめて気付いた。そうか、と思う。わたしは彼と離れたくなかった。そばにいたかった。いやだ、と泣いて暴れて、周りの人はそんなわたしに何も言わなかった。母も、義母も、義妹ちゃんも、他の家族も口を揃えて、言えなかったよ、と49日の時に言われた。義母は言う。「あなたのあの子へのわがままをはじめてきいた」

 

喪主のわたしがそんな感じになってしまったので、その日は1時間遅れで色々始まった。本当に申し訳なかった。泣いて暴れて動けなくなったわたしの黙っていてくれたのは幼馴染だった。何も言わずに、ただただ、ティッシュを渡してくれた。その優しさが、痛かった。

 

葬儀の30分前。帯を巻いた。やっぱり帯に触れるとわたしは一気にあの人の妻になれる気がするから、最後の最後に帯を残してくれたあの人と、すごくこう、一緒にいれてよかったなあって、そう思った。 

 

泣いて暴れたあとだからか、葬儀のわたしはやけに落ち着いていた。喪主をやりきれると信じていてくれた彼のことを、裏切りたくなかったんだと思う。「こりゃあの旦那にはあの嫁だわ」って思われたらやりきったってことになるなと漠然と思ってたんだけど後日、「さすが彼が選んだだけあるね」って褒めていただけたからうまくやれてたんだと思う。

 

 

気付いたら彼は煙になっていて、気付いたらわたしは、彼を胸に抱えて家の前につったっていた。本当に葬儀の記憶がないのだ。気付いたらわたしは、骨箱を抱え、2人で住んだ家にいた。

 

星になるんだから、この箱じゃ狭いでしょうよ。

 

そんなことを思いながら封を開けたら、流れ星が、一番星が目の前を流れた気がして。

 

あ、彼は亡くなったんだって、この時はじめて自覚した。彼は本当に、一番星になってしまったのだ。彼が好きなわたしを残して。愛してるも、言わせてくれないまま。

 

あの時から、わたしの心は止まったままだ。正直書き終えた今吐きそうになっている。

 

それから半年とちょっと経って、冒頭の場面に戻る。

 

「だいたい君はな、」

主治医は言う。

 

「旦那さんを亡くして、それを一人で背負って、よく生きていけると思っていたね」

 

そんなこと今さら言われても、とわたしは彼の遺言の話をした。半年黙ってろと言われたこと。主治医も彼を知っているから、君たちは似たもの同士だねえと笑う。

 

それから、と主治医は一呼吸おいた。

 

「君は、彼のヒロインになれたかどうかをとても気にしていたけれど。」

 

そう言って、主治医はあの日何度も見た封筒を取り出した。持ってたんかい、と思わずつっこむ。

 

「だって、半年後に渡せって言うからさ」

 

なんか無駄に四角いし硬いしなんなんだ、と思いながらわたしは封筒を開けた。

 

わたしが去年の夏、一番ハマったドラマの主題歌。大好きなアイドルのCD。

 

『これいじょうきれいにならないでよ』

 

久しぶりに見た、へたくそなひらがな。

 

「彼のそばにいた君が一番綺麗だったんだから、それが答えじゃないかねえ。」

 

そう呟いて、さて、と薬の説明をはじめた医者の向こうに、また流れ星が見えた気がして。

 

仕方がないから生きてやろうと、そう思った。

 

二宮和也さんのPretenderが怖い

本当は『○○と二宮と』のブログをやわやわ書こうかなあと思って、途中まで書いていた。だけど聴けば聴くほど二宮和也さんのPretenderが世に出たという事実に耐えられなくて、結局Pretenderだけの話をしようと決めた。

そもそもわたしはOfficial髭男dismというバンドがとても好きで、それもあって二宮くんがPretenderをカバーすると聴いてからずっとずっと楽しみにしていた。たぶん更新しそびれただろうなと思っていたのにかろうじて生きていた嵐のファンクラブの自分の名義にとても感謝して、二宮くんのPretenderが聴ける日を待っていた。

 

そんなふうにして迎えた6月17日。聴いて頭を抱えた。

 

良すぎて困る。良い。とても良い。予想外だった。てっきり本家型、非常に湿っぽく切ない歌がくると思っていた。こんな爽やかなPretenderわたしは今まで知らなかったのだ……ぜんっぜん、これっぽっちも、湿っぽくない……!!!!!

 

藤原聡の歌うPretenderには基本的に希望がなく、明らかにもう諦めた「君は綺麗だ」なのだけれど、二宮くんのPretender、諦める気配がない。怖いのだ。執念深いのだ……!!!!!ありそうでなかったPretenderが爆誕してしまった。というかわたしの中で二宮和也さんってわりと湿っぽい人だという認識だったんですがこのPretenderぜんっぜん湿っぽくないやんけ!!!!!卍のこと散々陽キャ陽キャ言ってたけど貴方が一番陽キャだよ二宮くん!!!!! 怖いよ!!!!! あきらめるそぶりを見せてくれ二宮くん!!!!!

というか二宮くんのPretenderを聴いて気付いたのですが藤原聡という人はたぶんこの世で一番切なくPretenderを歌う天才なんだと思う。それもそれで怖いのだ。たぶん藤原聡はどんなアレンジをしてもPretenderを切なく歌ってしまう。諦めてしまう。それもそれですごい才能なのだ。

 

とりあえず藤原聡はもう少し追いかけてくれ!!!!!そんでもって二宮和也はもう少し諦めてくれ!!!!!

 

要するに、Pretenderという曲は今、切ないの天才とポジティブの天才が同時に楽しめるのだ。かつやの大人さまランチと書いてPretenderと読む状態である。恋の始まりと失恋の始まりに同時に聴ける最初から最後までチョコたっぷり仕様になっている。たぶんこの世のラブストーリーは全部この2人のPretender流しとけば説明がつく。始まりは二宮、終わりは藤原。すごい世の中になってしまったのである。温度差に風邪引く。たぶんねっこが同じなのに違う花が咲いている。どっちも最高。最高だからこそ言いたい。温度差!!!!!

 

とりあえずこの2人のPretender、

感情のないアイムソーリー

からもう明暗が分かれている。

Official髭男dism藤原聡の「感情のないアイムソーリー」は感情があるのだ。感情があるのにアイムソーリーなのである。だから切なくて苦しい。いやもうちょっと追いかけな!?あきらめるの早いよ!?観客にもリアクションはできるぞ!!!!!

二宮くんの「感情のないアイムソーリー」は本当に感情がない。まじもんの感情なしである。いやお前はもうちょっと自我を見せろ。もうちょっと諦めな!?観客なんだぞお前は!!!!!

 

続いて

誰かが偉そうに 語る恋愛の論理 何ひとつとしてピンとこなくて

これもまたすごい。

Official髭男dism藤原聡の場合は論理を読み込みすぎだ。頑張った。頑張ったんだね……でもさ、まだいけるよ。諦めるなよ!!!!!恋愛は論理じゃねえぞ!!!!!がんばれ!!!!!

一方二宮くん。話を聞きなさい!?本を読め本を。論理を読んだんかお前は!!!!!お前のピンとこない理由は読んでないからだろ!?

 

それから、

もっと違う設定で もっと違う関係で
出会える世界線 選べたらよかった
いたって純な心で 叶った恋を抱きしめて
「好きだ」とか無責任に言えたらいいな
そう願っても虚しいのさ

ここはもう明らかに藤原聡さんの方は好きだと言えず、かたや二宮和也さんはたぶん好きだと言いまくっている。虚しいの温度が違う。

 

ここもそうだ。

グッバイ
繋いだ手の向こうにエンドライン
引き伸ばすたびに 疼きだす未来には
君はいない その事実に Cry...
そりゃ苦しいよな

藤原聡さんはもう君が見えていない。1人の未来を生き抜く覚悟ができている。かたや二宮和也さん。君が見えている。奪うから苦しいのだこいつは。なんて執念深いんだ……

 

 

極めつけは

それじゃ僕にとって君は何?
答えは分からない 分かりたくもないのさ
たったひとつ確かなことがあるとするのならば
「君は綺麗だ」

ここである。ここが本当にすごい。

Official髭男dismさんはもう恋を諦めている。おつかれさん……頑張った。君は本当によく頑張った。でも……もうちょっと!!もうちょっと行こうぜ!

せめて告白はしようぜ!不戦敗で気持ち切らすなって!!!!!

なあ!!!!! 

 

そんで二宮和也さん、もうちょっと諦めようぜ。もうやめよう。わかった、気持ちはわかる。でも惚れ惚れして、君は綺麗だ……じゃないのよ。諦めなって。

 諦める努力をしろよ、

二宮!!!!!

話を聞け!!!!!

 

 

 

もはや1人千鳥。わたしの中のノブが双方にツッコミをいれていたら日が暮れる。とにかく藤原聡は諦めすぎだし二宮和也は諦めが悪すぎる。離れる気しかない人と離れる気なんてまったくない人。どっちもいいから困る。お前さんたち2人でラブソングの覇権をとるのやめな!?2人で月9をはじめて完結させるのやめな!?親愛度によりハッピーもバッドも選べる仕様ですって乙女ゲームみたいなことすな。

 

 

さあ貴方もこの曲を交互に聴いてぜひ1人月9を楽しんでほしい。ハッピーエンドなら先にOfficial髭男dism、後に二宮くんだけれど、わたしのおすすめは先に二宮、あとにOfficial髭男dismである。そっちの方が辛い。貴方も味わってくれ。頼むからわたし1人にこのループを背負わせないでくれ……頼む…………

 

Pretender

Pretender