君がここで笑うシーンが

いや、答えなんかはいいんだ ただちょっと

中島健人くんが結婚を連れてきた

「はてぶろとかTwitterに書いてくれてもいいんだよ。そうでもしなきゃ信じてくれないでしょ」とかふざけたことも朝から言われたから、ちゃんと書き残しておこうと思う。なにせわたしは人より記憶する力があまりにも低い。本当は先に書かなきゃいけないものが仕事もこちらもたまっているけど許してほしい。これを残さなきゃわたしは明日からまともに働けそうにない。

たまたま今日は休みだし、いつか忘れてしまったら困るから、書き残しておく。

 

 

「頼むから、浮気しないで結婚してえ〜!!!」

「今更だけど結婚前提に付き合ってほしいんだ」

「結婚しよう」

何を言われているかわからなくて、私が返事をする前にその電話は切れた。付き合って3年目の彼氏から来た、真夜中の電話。我妻善逸並みに汚い高音と号泣音声を、わたしは聞いた。

 

 

生まれてはじめて、結婚しようと言われた。それも大泣きしながら、半ば絶叫みたいな形で。

 

「……もしかしてこれは、プロポーズなのか?」

そう気付くまで、随分時間がかかった気がする。

 

事件の発端は、ザ・テレビジョンだ。私の信望するアイドル中島健人大先生が、ウェディング風グラビアを撮ることになったのである。

告知を受けてから1週間、わたしは心底それを楽しみにしていた。あの中島健人大先生のウェディングだ。グラビアはともかくインタビューが絶対いいことは読まなくてもわかる。わたしの人生の責務は中島健人大先生の言葉を後世に残すことだ。早くけんとくんの言葉を浴びせろ!!!……あ、まって、やっぱりやだ、振られる準備できてない。親友の結婚式で新郎側にいるけんとくん見て泣きたいけどまだ無理、等々、好き勝手に喜び悲しみながら本当に楽しみにしていた。

 

そうして迎えた5月19日。わたしはハイボールを飲みながらジョンの解禁を待った。読んだ。号泣した。

全部よかった。写真も、テキストも、全部。

脳内にらいおんハートとpretenderと名脇役スペシャルメドレーが賛美歌のように流れていた。ああ神様、わたし中島健人くんと結婚しました。ああ神様、たった今親友と中島健人くんが結婚するところを見届けてきました。ああ神様、神様……!!!

何がいいって結婚証明書に「everyone」と残すその心意気!!生きとし生けるもの全員中島健人と結婚できてしまうのだ。バンザイ!!!それから、自分自身が引き立て役でいいと言いながら肌は見たいと正直なところ。好きだ!あとわたしはあなたの肩幅が好きだよ!大好きだ!!あと白い手袋の突然のコント!好きだ!結婚して!あ、もうしてた!!

とまあとにかくお祭り騒ぎだったのだ。深夜に泣きながら中島健人さんを褒め称えていた。

あ、まだ好きなとこあった。「親に紹介しやすい面白い男子でしょ!(笑)」なとこ。面白いと紹介しやすいがイコールだと本気で思ってるとこ。すんごく好き。大好き。

 

とにかくもう〜それはそれは夢見心地で、お父さんお母さん今までありがとう、米農家継げなくてごめんね…………って血迷ったツイートをしだすくらいには浮かれていた。中島健人最高音頭を踊っていた。

 

そして泣いて笑いながら思うのだ。こりゃ〜自分は当分先だなあと。だって今けんとくんと結婚しちゃったし。一応、その、世間でいう彼氏のような人はいるけど、お互いどう考えても今はご時世的にも家庭ののっぴきならない事情的にも無理だし。あはは〜けんとくんむこ投げしよ〜!!と、そんな感じで一瞬見えた気持ちに蓋をするように、見ないふりをするように、わたしはずっとジョンを読みながら泣いていた。恐ろしいことに涙はずっと止まらなかった。

 

ふと、今遠距離のあやつは何をしているかなという気持ちになって、わたしはLINEを開いた。どうせ今日もあえないだろうな。返事があるはずなかろう。そう思って、とても軽い気持ちでわたしはこう送った。

 

「これから結婚してくるわ」

 

もうけんとくんとしてるんだけどね〜!!さあ寝よ〜!!!と満足したわたしは健やかに就寝しようとした。あしたは入れ替えでおやすみだ。なにしよっかなあ〜、とうきうきで。

 

ところがスマホがうるさい。ずっとうるさい。夜中にいきなりずっとうるさい。

 

腹が立った。誰だ。わたしは今けんとくんと結婚したんだぞ!!!!!

 

「うるさ「浮気しないで結婚してくれええええ」」

 

…………?

とんでもない絶叫が聞こえて、わたしは思わずスマホを落とした。うるさい。めちゃくちゃうるさい。すごい泣いてる。普段滅多に泣かない、怒らない、心がないと言われた男が、泣いている。

 

電話口の向こうの男はこう捲し立てた。

「結婚しよう!!しよう!!!」

「今更だけど結婚を前提に付き合ってくれ、またちゃんとあってプロポーズするけど結婚しよう」

「結婚しよう」

「浮気しないで!!!」

「結婚してくれえええええええええええ」

その他、文字に表せない恥ずかしいあまったるい色々。中島健人くんの口からしか聞いたことないようなやつ。わたしはわけがわからない。なんだこれ。

 

そしてそのまま電話は切れた。いや返事をさせろ!?

 

けんとくんのジョンを読み号泣→「わたし結婚してくるわ」と一応三年付き合っている人に血迷ったラインをする→鬼電→俺が悪かった浮気しないで結婚しようと電話越しで泣きながらプロポーズされる→「いや浮気もなにも中島健人くんの話なんだけど……?」(今ここ)

 

わけがわからないまま座っていれば、先程のが本気のプロポーズだとLINEが入る。「……もしかしてこれは、プロポーズなのか?」という間抜けなつぶやきは、たまたま見えたカレンダーの「大安」の文字に消えた。泣くだけ泣いてとにかく本気で結婚するからな、浮気するなよ!!ってこれ、プロポーズなんですね、へえ、へえ…………

 

 

え、わたし、結婚するの?

 

夜中にTwitterをしながら考えた。わたしはどうやら結婚するらしい。嬉しい。だってとても好きだ。正直環境的に無理でもせめてプロポーズだけはって去年くらいから思ってた。あるとないでえらい違いだ。でもわたし酔ってるし、もしかしたらこれは悪い夢かもしれない。ムックが背後から来るかもしれない。

ありがたいフォロワーやたまたま起きていた友人達がとにかく言質を取れ顔を見て聞けと言ってくれたので、翌朝5時、わたしはzoomの約束を取り付けた。向こうは4時半には仕事のために起きていることがわかっていたから、あとはわたしさえ起きればよかった。

 

 

翌朝。つまり今朝。わたしは寝坊した。30分。向こうは律儀に待っていた。ごめん。

にもかかわらずいきなり脅しをかけた。「録画するぞ言質とるぞ」そして彼はつとめて冷静に、わたしの人生の中に閉じ込めておきたい優しい優しい言葉を、口にする。

それでようやく実感した。このご時世があけて、のっぴきならない事情が終わったら、結婚するんだ。

この人が見せてくれた優しい世界で、生きるんだ。

 

余韻に浸りつつ思い出す。危ない、解いておかなければならない誤解があった。いもしない浮気相手のことだ。イマジナリー中島健人くんの話をしなければならない。

 

「え、けんとってあの、なかじまけんと?あれえ、まじ?でもまじで取られると思った、よかった。けんてぃーで!けんてぃーに取られる前にプロポーズした!!イマジナリー健人でよかった!!!」

だいぶまろやかにしたけどこれの500倍うるさいトーンと文字数と圧で彼は叫んだ。うるさい。今更気付いたけど君は動揺すると我妻善逸になるんだね……しまいにはリアリー中島健人を目指すという。知らんがな。リアリー中島健人中島健人だけなんだよ。そもそもイマジナリーもいないんだよ!!菊池風磨さんに怒られるでしょ!!!!!

 

くそデカスケールなとこけんとくんに似てるなあと思ってたけど訂正しようと思う。似てない。うるさい。……むかつくけど、そこがかわいい。ええい認めよう!わたしは鬼滅だとずっと我妻善逸が好きだった!!!!!

 

いよいよ中島健人先生を神と呼ぶ以外の選択肢がなくなってしまった。いや元々神様なんだけど、結婚まで連れてこられてしまった。やばい人と別れられたきっかけも、この人とこうなるきっかけも、プロポーズのきっかけも、全部けんとくんだ。おちゃめじゃないって言うところがおちゃめなけんとくんのおかげで、とんでもない世界にきてしまった。

 

とにかくまあ、中島健人くんにぶん殴られたおかげで、どうやらわたしは結婚するらしい。まさか中島健人さんに触発されるとは思わなかったしなんとなく結婚はするんだろうけどどうせプロポーズなんて当分先だろと思っていたのであまり実感はありませんが、とにかく近い将来結婚するらしい。いいよこっからまた長くなっても。いくらでも待つよここまできたら!仕方ない!好きなんだよ、マジで!