君がここで笑うシーンが

いや、答えなんかはいいんだ ただちょっと

それでもなにかを信じた、貴方へ。

そうか、横綱になるんだなあと昼休みに筆をとっている。どうしてもこれだけは、短くても短くても言葉にしておきたかった。

 

照ノ富士というお相撲さんを知ったのは、いったいいつだったろう。おかしな話だけど、気付いたら好きだったというのが正しい。最初の優勝も、その前も、あの日々も、去年の夏も、今も。わたしが相撲を見るときはいつも、あなたがいた。

 

わたしが最後にあいにいった照ノ富士は、十両にいた照ノ富士だった。まさかあれからこんなに長い旅路になって、まさかあなたが横綱になる日がくるとは思わなくて。なんて言葉をかけるのが正解なのかなあと思い続ける日々だった。頑張れだけは絶対に違うことしかわからなかった。だって、あんなにも努力をして、歯を食い縛る照ノ富士に、頑張れなんて言えるわけないのだ。もう苦しいくらいに、切ないくらいに、頑張っているんだ。病気に、怪我に、踏ん張り続けるあなたに頑張れなんて口が裂けても言えなかった。

 

あなたがいつか話していたように、きっと、土俵の上にいる貴方を見られる時間が長くないであろうこと、こちらも覚悟をしています。だからこそこれからの貴方を、あなたが土俵の上にいる姿を、目に焼き付けていたいなあと思っています。

 

「『不動心』を心がけ、横綱の品格、力量の向上に努めます」

貴方が口にしたように、きっとこれから品格だなんだと品格が誰よりない某審議委員会が言い出したりするでしょう。でも、今の貴方を何も心配していません。だって、あれだけのことを乗り越えてきたんだから。ここまで、手探りでも、真夜中でも、生き抜いてきた貴方だから。だからきっと、だいじょうぶ。

 

去年の夏からずっと、「常識も非常識も 君とならば ぶち壊せるよ」という言葉について何度も考えてきました。あれはきっと、貴方の生き様なのだろうと今は心から思えます。そういえばちょうど、貴方が復活優勝したのはこの曲が世に出たと同じタイミングでしたね。不思議な巡り合わせです。

 

終わらないだろう? 終われないだろう?と師匠に鼓舞され続けてここまでたどりついた照ノ富士を本当に本当に尊敬します。貴方の生き方はまさに、手探りでも、たとえ明日がわからなくても、それでも何かを信じていたから、だからここまでこれたのだと思うのです。何度も破れて、何度も傷ついて、それでもやり直し続けた照ノ富士というお相撲さんをこの目で追いかけられて本当によかった。

 

どうかどうか、貴方らしい相撲を取り続けることができますように。どうかどうか、貴方が1分でも1秒でも長く、土俵の上で生きることができますように。

 

改めて、よく一番下からここまで戻ってきたなあと思います。おかえりなさい。

そして、横綱昇進おめでとう。怪我と病気にだけは本当に本当に気をつけてください。どうかどうか、毎日、毎場所、健康で、無事でいてください。ただそれだけを願っています。

 

横綱昇進によせて。

2021.7.21