映画を観ているようだった。映画館で、映画をはしごした日。その後気持ちがおさまらなくて、溢れるがままに筆をとった。
Official髭男dismというバンドが「やりたいことをやろうとした」結果がこの14曲ならば、とんでもないバンドを好きになってしまった。こんな、こんなことあっていいのか?
まず一曲目から頭をガンガンと殴られる。こんな完璧なリード曲あるか?と思ったけどこれリード曲じゃないんですよね……もどかしいという不自由を楽しむ幸せ。そんなぼやけた光から映画の幕は開く。
「あなたにも受け取ってほしくて」という言葉の後から始まるアポトーシス。伝えたかった言葉は、「別れの時まで ひと時だって愛しそびれないように そう言い聞かすように」なのだろうか…線の回収というか、言葉がきちんと繋がっていくことに驚嘆してしまう。優しいのに寂しい、夏の終わりの寂寥感がこのアルバムをぐっと包み込んでいるんだなあ…
「落ち葉も空と向き合う蝉も 私達と同じ世界を同じ様に生きたの」が本当に苦しく愛おしい。
ドアの音からの眩しい大きなファンファーレ!!!こんなに素敵な朝に見る夢はあるか?こんな用意周到なことあるか…?アポトーシスで紡がれた具現化されたものが、ぼやけて抽象化されていく。そしてなにより、この曲のサビは朝なんだよな。アポトーシスの後に聴いてはじめて気が付いた。
「見えないものを見て笑う君の事を分かれない」僕と「訪れるべき時がきた」ことをきちんとわかっている君のコントラストが苦しい。
朝にみる優しい夢を経て、物語はまた眠れぬ夜へと向かっていく。ああ、「名前もない夜」を超えた先がアポトーシスなんだな…
ああ、きちんとまた朝が来た!まぶしくて、優しい朝だ。わたしはたぶんこの人たちの決して急かさない強さに心底惚れている。誰にだってきちんと平等に朝は来る。過去の幸せの、今の強さの象徴のようなパズル。好奇心をかろうじて繋いでくれるパズル。そんなパズルが負担になる日もあるのかもしれない。
「光を探せ 掴め」の後にこの曲をもってこれるのはもう知能犯の所業である。驚いた、こんな鮮やかに、それもきちんと理由を持って繋がることある…?ちゃんと光を探して、掴んでいるじゃないか……フィラメントのあとのHELLO、もっともっと眩しくてあたたかい。パズルを並べた先にいたヒーローは、今も変わらずちゃんとそこにいたんだ。変わらない強さが存在していたことに安心する。
ああ優しい映画だなあ、と思ってきいていたのに、一筋縄ではいかないのである。
いや待てここでCry Babyは情緒!?爽やかな朝の後に喧嘩すんな!!!!!情緒!!!!!メモを取るペン投げた、情緒!!!!!
— つぐみ🧅 (@_tokormati) 2021年8月17日
ほんと情緒!!!!!おい!!!!!
爽やかな朝を迎えたのにケンカすんな!!!!!
情緒殺しの髭男が本気を出してしまった…爽やかな、幸福な朝を迎えただろう?なあ、なんでだよ?なんで?
ケンカすんな、
雨を降らすな!!!!!
光を掴んで喧嘩をするな…リベンジを誓うのは今なのか?それ本当に光を掴んだ今朝じゃなきゃダメだったのか?どうして、どうして、どうして………
この流れ、どうやって回収するんだよ……
ちょいと待て、直後にCry Babyちゃんと回収されたぞ…?
最終回じゃん。シャワーじゃん、ちゃんと血が流れていくんだが…夕方じゃん、あの頃を思いながら歩いてるやつ…アニメの最終回じゃん……
「君はマスクの裏でわかりやすくため息ついた」
ああ…この意味がわかってしまうのが切ない。日常にすっかりマスクが馴染んでしまった。
「変わらないまま 変わったまま」願うように、祈るように、確かめるようにこの先も生きていかなきゃならないんだな…
「変わらないままで 変わったままで 暮らしていこうよ」の後にこれはしんどいです、楢崎さん!!!!!楢崎さん!!!!!
実家に帰りたい……変わらないままを探してちゃんと帰る場所があるんですね……
ここまでの流れで映画がとれるしJRかなんかのイメージビデオが撮れます、実家に帰りたい。映画のエンドロールだ…
「ここによく居たふたりが 一緒に住むらしいね
いつものようで 違うみたいだ」
映画が終わった……新しい物語が始まる…これだ本当のエンドロール……
いやだからですね、ここでパラボラは知能犯の所業なんだよな?ああ、エンドロールの2人はこうやって幸せな新生活を…ってなるでしょうよ。これで本当に映画が終わる。
「思い違いだらけの めちゃくちゃな過去」
ああ、間違いも正しいも全部自分のこととして肯定できるこの強さよ……本当に優しい人しかできないこの全肯定という強さよ…また私たちにちゃんと朝が来た。
これは大変個人的な話なのですが現在進行形でパワハラで会社と揉めに揉めて来月からむりやり休暇をとらされる地獄の中にいまして…刺さりましたね…
うわあああと頭を抱えました。これですよ、これ……「少なくはない前科があって」ってそりゃそうだよな、お前は土砂降りの雨の中でリベンジを誓ってるもんな……でも迷惑はお互い様だよ…「病まないためにも」ってこんなはっきり言われるのゾクゾクしますね…休んでいいんだよな…本当に我々は何と戦っているんでしょうか…
救済だ……電源切って、全部オフにしてたどりついた場所がこの常夜燈なんだ…救済だ……これで我々は朝に眠れる…眠ることが許されるんだ…「眠りにつくまで隣にいるよ」その言葉で救われる命がここにあります…帰る場所がちゃんとここにある…立場も肩書もなくても、わたしはここにいれるんだ…
来ました、羅針盤。2本目のエンドロール。「まだ強くなれそうになれない自分のことも 愛せるように」話をした結果がこの朝なんだね…ちゃんと救われて旅に出れるんだ…「悔やむ権利」を思い出して踏み出せるんだ…
「人格者ではなく 成功者でもなく いつでも今を誇れる人で在りたい」、大人になるって、自分自身に勝利を告げるって、きっとこういうことなんだと思います。常夜燈だけで孤独な夜を乗り越えた先の光がちゃんとあるんだなあ…
universeという救済
— つぐみ🧅 (@_tokormati) 2021年8月17日
ゆーにばあああああす!!!!!!ここで!ここで!!!!!情緒の維持…爽やかなエンドロール…
完璧な終わりだ、幸福な最後だ…この曲が流れれば街は彩られ草木は蘇り花が咲く。universe、俺たちの帰る場所…この曲が流れたらすべてハッピーエンドなんですよ…ああ我が幸福な人生、ありがとう人生。人類よ宇宙の源よ。
さあ映画が終わった、救われた我々は帰宅せねばならない。
まて全然救われなかった、俺たちはまだ家に帰れない………
— つぐみ🧅 (@_tokormati) 2021年8月17日
家に帰れないまま終わった……とんでもねえ……映画をみおわったみたいな疲労だ……俺たちはまだ家に帰れない……映画の中では救われたのに…家に…帰れない………
— つぐみ🧅 (@_tokormati) 2021年8月17日
そう、私たちは救われてもなお帰れない。でもこれは本当にそうなのだ。素晴らしい映画を観た後ほど人間は自分が情けなくなる時がある。…ちょっとまて、映画の後のアフターフォローまであるこのバンド、なに?Official髭男dism、家に帰れない気持ちまで救ってくれるのなに?
「悔いなどない そう思いたい 眠気にいよいよ耐えられない」
落ち着け、そこで寝るな、お前は家に帰らなきゃいけないんだぞ!!!がんばれ!!がんばれ!!
「もう朝になるね やっと少しだけ眠れそうだよ」
ああ、またアポトーシスが違う顔を見せ始めた。
Editorialという旅路は訪れるべきが来るまで終わらないらしい。まさに人生の縮図だ。Official髭男dism、なんて恐ろしいバンドなんだ。わたしはただ、このアルバムを大切に大切に聴くことしかできない。人生と人類の縮図を、読み解くために。