君がここで笑うシーンが

いや、答えなんかはいいんだ ただちょっと

世界で一番綺麗な人を自担に選んだ

わたしの自担は、世界で一番綺麗な人だ。美しすぎて目が眩むほど、綺麗だ。名前は、中島健人さんという。健やかな人と書いて、健人。綺麗だ。

 

最近、悩んでいることがある。けんとくんは綺麗で、わたしの言葉は綺麗ではない。わたしの好きにはあらゆる欲望がのっていて、そんな欲望まみれの好きを彼に届けるのが、怖い。

 

なんというか、わたしのけんとくんへの「好き」は、けんとくんを傷つけてしまうんじゃないか、綺麗で優しい彼を汚してしまうんじゃないかって、ずっと悩んでいるのだ。もしもわたしの好きの筆が綺麗な色じゃなかったら、自分勝手に塗り潰してしまっていたら。そうなってしまうことが怖いのである。わたしの好きで、好きだけじゃない気持ちがのった好きで、好きな人を勝手に塗りつぶしてしまっている気がして、勝手に真っ黒にしてしまいそうで、怖いのだ。

 

わたしの好きは、綺麗じゃない。自分の気持ちに嘘をついて、誰かの怒りを勝手に吸い込んで傷ついて、胸を張って貴方を好きだとは言えない。色々なことを吹き飛ばして貴方を好きだと笑いたいのに、見なきゃいいのに画面越しの言葉が、わたしの筆を濁らせていく。

 

好きなのだ。もっと自信を持ちたい。誰の言葉に揺さぶられなくても、わたしはあなたが好きだと伝えていたい。だけど現実はそうはうまくいかない。頼んでもないおすすめ欄。みたくもない圧。知りたくないこと。吸い込みたくない怒り。触れなきゃいいのに、と思いながら、その人のことごと嫌いになりそうで、全部全部嫌になっていく。どうして、誰かの言葉に左右されて、貴方を嫌いになりそうになってしまうんだろう。誰かの怒りを、ネガティブを肩代わりできるほど、わたしは健康じゃないのに。

 

馬鹿らしい悩みだと自覚はしている。中島健人さんがそんな1人の小汚い人間のせいで染まる人ではないとわかっている。わたしのような人間を遠ざけるほど、眩しい太陽の人だとわかっている。

 

わかっているのに。わかっているから、怖いのだ。

 

世界で一番綺麗な人を自担に選んだから。選ばせてもらったから。わたしのような人間でさえ、あなたは許してくれるから。だから、怖いのだ。

 

けんとくんは、綺麗だから。許してしまうんだ。ライブで慣れないぎこちない笑い方をしている愚かな人間を。会えなくて苦しいと嘆く夜まで、包んでしまうのだ。「それとない浮かれた夢を抱くのも 悪くはないよ」と、あたらしいわたしまで許してしまうのである。

 

なにかと決断をして結論を出すことを急がせるこの現代において、「曖昧でいいから」と伝えてくれる。そんな綺麗なあなたが好きなのだ。甘く溶けて
あふれそうな、このどうしようもない気持ちも、愛しくてやるせないというわがままも、貴方は許してくれてしまうのである。

 

今のわたしはとても面倒で厄介で、変わらないまま
止まらない夢をみたいと思ってしまっている。あなたを汚したくないと思いながら、それでも止まらない夢をみたいと、縋っているのだ。混み合う感情の精査が、下手すぎる。

 

明日も貴方が透明なままいられますように。貴方の色が変わることがあっても、あたらしい貴方の声を受け止められますように。わたしのつみあげた気持ちなんて、貴方に届いたりしませんように。

 

そう思いながら、今日もわたしはソフトクリームをかじるのだ。曖昧でいいから、明日も貴方が幸せであるようにと、甘く溶けても好きでいたいと、願いながら。